抗老化作用を期待される栄養成分ニコチンアミドリボシド(NR)と ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の生体内代謝経路として 腸肝循環機構が関与していることを解明
本研究のポイント
富山大学学術研究部医学系分子医科薬理学講座の中川 崇教授、夜久 圭介講師らの研究グループは、抗老化作用を期待されている栄養成分、ニコチンアミドリボシド(NR)とニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の生体内における新たな代謝経路として、「腸肝循環」とよばれる機構が関与し、腸内細菌叢が重要な役割を果たしていることを明らかにしました。この研究結果は、今後の老化メカニズムの解明や老化に関連したさまざまな疾患の治療薬開発に繋がることが期待されます。
研究概要
NRやNMNは、動物実験などで抗老化作用や寿命延長効果が確認され、本邦でもサプリメントとして利用され、近年注目を集めています。NRやNMNは、生体内で最終的にニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)※1とよばれる分子へと変換され、その健康増進効果を発揮すると考えられていますが、どのようにNADへと変換されるのか、その代謝機構などは不明な点もあり、さらなる解明が望まれていました。本研究では、代謝物を高精度で測定できる質量分析という測定法を用いて、マウスにおけるNRやNMNなどのNAD前駆体の生体内代謝経路を解析しました。その結果、NAD前駆体は胆汁を介して腸管内に分泌され、腸内細菌で代謝を受けた後に再吸収されて肝臓でNAD合成に利用される「腸肝循環」とよばれる機構が関わっていることを発見しました。これらの研究成果は、NRとNMNの生体内での利用経路が従来予想されていたものよりもかなり複雑であることを示しており、これらの前駆体を用いた臨床研究を進める上で非常に重要な知見であると考えられます。
本研究成果は2025年3月21日午後2時(米国東部時間) (日本時間3月22日午前3時)に米国科学誌サイエンスの姉妹紙である「Science Advances」にオンラインで公開されます。
用語解説
NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)
ビタミンB3の活性型の分子であり、体内では糖代謝や脂質代謝を円滑に行うための補酵素として働いている。また、DNA修復酵素であるポリADPリボースポリメラーゼ(PAPR)や長寿遺伝子サーチュインもNADを利用して機能することが知られており、老化との関わりが注目されている。
研究内容の詳細
抗老化作用を期待される栄養成分ニコチンアミドリボシド(NR)と ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)の生体内代謝経路として 腸肝循環機構が関与していることを解明[PDF, 567KB]
論文情報
論文名
Nicotinamide riboside and nicotinamide mononucleotide facilitate NAD+ synthesis via enterohepatic circulation
著者
Keisuke Yaku, Sailesh Palikhe, Tooba Iqbal, Faisal Hayat, Yoshiyuki Watanabe, Shiho Fujisaka, Hironori Izumi, Tomoyuki Yoshida, Mariam Karim, Hitoshi Uchida, Allah Nawaz, Kazuyuki Tobe, Hisashi Mori, Marie E Migaud,Takashi Nakagawa
掲載誌
Science Advances.11.eadr1538 (2025). 21 Mar 2025.
DOI
https://doi.org/10.1126/sciadv.adr1538
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富山大学 学術研究部医学系
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