アルツハイマー病に関与するDAPK1に対する阻害剤の開発に成功
研究のポイント
- 天然ポリフェノールであるイソリキリチゲニン※1が、アルツハイマー病※3に関わるタンパク質DAPK1※2の機能を阻害することを発見しました。
- イソリキリチゲニンを改良することで、効率よくDAPK1を阻害する化合物を創出することに成功しました。
- 開発した化合物はアルツハイマー病などの神経変性疾患や虚血性脳疾患に対する分子標的薬として有望です。
概要
富山大学学術研究部薬学?和漢系 構造生物学研究室の横山武司 助教は、同大学の工学系 生体機能性分子工学研究室の豊岡尚樹 教授、岡田卓哉 助教との共同研究によって、天然化合物イソリキリチゲニンがプログラム細胞死関連タンパク質キナーゼ(DAPK1)を特異的に阻害することを発見し、さらに阻害能力を向上した化合物の開発に成功しました。DAPK1はアルツハイマー病の発症や脳虚血による神経細胞死に関連しています。今回新たに合成した化合物は、神経変性疾患や虚血性脳疾患における新しい神経細胞保護薬として期待されています。
本研究成果は、「European Journal of Medicinal Chemistry」に2024年9月6日(金)(日本時間)にオンラインで掲載されました。
用語解説
(※1) イソリキリチゲニン
天然に存在するポリフェノール化合物で、主に生薬である甘草の根に含まれることが知られています。さまざまな生理活性が報告されています。
(※2) プログラム細胞死関連タンパク質キナーゼ(DAPK1)
タンパク質をリン酸化する酵素の一つで、特にプログラム細胞死のシグナル伝達に関与しています。その名は、この機能に由来します。アルツハイマー病だけでなく、脳虚血時の神経細胞死にも関与しており、DAPK1阻害剤は脳虚血における神経細胞保護薬としても期待されています。
(※3) アルツハイマー病
進行性の神経変性疾患であり、最も一般的な認知症の一つです。アルツハイマー病の病理的特徴には、脳内にアミロイドβが蓄積して形成されるアミロイド斑と、異常化したタウタンパク質による神経原線維変化があります。これにより神経細胞の機能不全や死滅が引き起こされ、脳の萎縮や神経ネットワークの破壊が進行すると考えられています。
研究内容の詳細
アルツハイマー病に関与するDAPK1に対する阻害剤の開発に成功[PDF, 620KB]
論文情報
論文名
Discovery and Optimization of Isoliquiritigenin as a Death-Associated Protein Kinase 1 Inhibitor
著者
*Takeshi Yokoyama, Kotono Hisatomi, Saki Oshima, Ichiro Tanaka, Takuya Okada, Naoki Toyooka
(*:責任著者)
掲載誌
European Journal of Medicinal Chemistry
DOI
https://doi.org/10.1016/j.ejmech.2024.116836
お問い合わせ
富山大学学術研究部薬学?和漢系
TEL:076-434-7570
助教 横山 武司
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富山大学学術研究部工学系
TEL: 076-445-6859
教授 豊岡 尚樹
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助教 岡田 卓哉
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